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展覧会のみどころ

展覧会では、「宗教」「肖像」「自然」の三つの主題を三つのセクションで見て行くこととします。出品される版画・素描作品は、オーストラリア、メルボルン国立ヴィクトリア美術館からの１０５点を中心に、国立西洋美術館の所蔵版画４９点、さらにベルリン国立版画素描館からの３点の素描を加えた計１５７点です。

メルボルンのデューラー・コレクションは、1891年に英国人トーマス・Ｄ・バーロウ卿が個人で収集を始めた、刷りの質の極めて高い重要なコレクションとして知られています。デューラーのほぼ全版画作品をカバーする世界的にも希有なコレクションとして知られ、フェルトン財団からの寄贈によって1956年にメルボルンの収集となりました。さらに、３点の素描をベルリン国立版画素描館から借用し、１点ずつ各セクションのコンセプトを示す導入作品（ライトモチーフ）として展示します。素描を加えた構成によって、モノクロームな版画のみの展示に文字通り色を添えるというだけでなく、素描が担う構想段階の芸術や写真の美といったものを直に知ることができるでしょう。あるいは、版画へと連なる線描の芸術としての展開をそこに見ることもできるでしょう。

国立西洋美術館では、1972年に『デューラーとドイツ・ルネッサンス』展を開催して以来、今回ほど多くのデューラー版画を展示したことがありませんでした。また、当館が収集してきたデューラー版画から名品４９点を選りすぐり一堂に展示するのも初めてのことです。ぜひ、この機会に、デューラーの精緻な版画芸術の世界をご堪能いただきたいと思います。